先天性鼻涙管閉塞開放術【ブジー処置】
先天性鼻涙管閉塞開放術(せんてんせいびるいかんへいそくかいほうじゅつ)【ブジー処置】
乳児の「なみだ目」「目やに」の原因が、先天性の鼻涙管閉塞の場合、
「先天性鼻涙管閉塞開放術」をして、治療することがあります
【先天性鼻涙管閉塞開放術~ブジー処置~】
「先天性鼻涙管閉塞開放術」は、医療用の針金【=ブジー】をまぶたの内縁にある涙点から挿入し、鼻涙管にある膜を強制的に破り、涙が通るようにする処置です
鎮静薬(催眠薬)を使うこともあります
動かないようにタオルでくるみ、その上から介助者がお子さんが動かないように押さえつけます(☜安全・確実に行うために必要です)
涙管通水試験(涙管が通っているか涙点から水を通して確認する検査・鼻涙管閉塞していなければ、水が鼻まで抜ける)を行い、流れが悪ければ、ブジー処置を行います
ほとんどが1回のブジー処置で治るりますが、治らない場合は1~2か月ほどあけて再度ブジー処置をやることもあります
初回の処置で、鼻涙管下端以外の部位での閉塞が疑われたり、鼻涙管形成不全が疑われる場合は、
CTスキャンや全身麻酔下での精密涙道検査が必要になります
※ブジー処置・精密検査は当院では実施しておらず別医療機関への紹介となります※
【ブジー処置について】
ブジー処置は、1歳未満であれば外来処置で可能です
1歳を超えると大きくなり力も強くなってくるので、入院して全身麻酔下での治療が必要になります
先天性鼻涙管閉塞は自然治癒することが多いので、1歳まで自然治癒を期待して待つこともできます
手術を急いだ方がいいケースと手術を避けた方がいいケースとを挙げていきます
≪早めに手術をした方がいいケース≫
①急性涙のう炎を起こしている(目頭が化膿して腫れている)
②眼瞼炎を起こしている(目の周りが涙でぬれて腫れている)
③先天白内障などの眼球の手術を控えている
(先天鼻涙管閉塞があると目ヤニが多く、そのような状態で目の手術を受けると、術後に眼内へ細菌が入って化膿し、最悪の場合は失明することも)
≪手術をせずに様子を見た方がいいケース≫
①免疫不全が疑われる場合
術後、血液中に細菌が入り、「敗血症」という致命的な合併症が起こる可能性がある
②先天性心疾患がある場合
術後、血液中に細菌が入った場合、重症化する可能性がある
※上記の場合でも、≪早めに手術をした方がいいケース≫に当てはまる場合は、小児科担当医と相談しながら治療方針を決めていきます
※ブジー処置は当院では実施しておらず別医療機関への紹介となります※
【ブジー処置後の経過は??】
多くのお子さんは、術翌日から「なみだ目」「目ヤニ」が消失します
症状が残る場合は、1~2か月経ってから再度ブジー処置を考えます
ブジー処置で開通しない場合には、次の治療戦略を考えていく必要があります
また、ブジー処置後はずっと調子が良かったのに、また「なみだ目」「目ヤニ」が再発してきた場合には、先天性鼻涙管閉塞の再発よりも、鼻性鼻涙管狭窄や後天性涙道閉塞の可能性を考えます
その場合は、成人の涙道閉鎖と同じ治療戦略となります
【ブジー処置~当日朝の準備~】
①体温を測る
下痢をしていたり、熱があったり、鼻水や咳などのかぜ症状があるなど、体調が悪い場合はおかかりの眼科へ連絡をしてください
延期することもあります
体調が悪いと、術後に「敗血症」(※1)のリスクがあがります
ブジー処置後には、きわめて低頻度ですが、「敗血症」が起こる可能性が指摘されています
敗血症を見張るには、処置後のお子さんの様子を注意深く観察してください
敗血症が起きるのは処置の日の夕方以降です
症状は、38度台後半~39度台の高熱が出ます
その場合は、夜間でも小児救急を扱っている病院を受診し、
「眼科で先天性鼻涙管閉塞でブジー処置を受けたこと」
を小児科医に伝えてください
また、処置を受けた夜はお風呂に入れず、シャワー程度ですませるか、体を拭く程度にしましょう
これは入浴により、体温があがるので、敗血症で体温が上がっているのか、入浴によるものなのかわからなくなってしまうためです
(※1)敗血症とは…
体中の血液中に細菌が入ることで、それに引き続き肺炎や心内膜炎、細菌性関節炎などが起こりえます
これらはいずれも、命にかかわる病気です
心疾患や免疫不全があると、敗血症・肺炎・心内膜炎・細菌性関節炎などのリスクがあがります
心雑音や心疾患、あるいは免疫異常を指摘されてことがある場合は、必ず申し出るようにしましょう
②病院到着の3時間前までに授乳・飲食はすませておく
処置中に吐くとそれを吸い込んで肺炎(誤嚥性肺炎)を起こすことがあるため
③少し早めに起き遊ばせて、ほどよく疲れてもらう
催眠剤が効きやすくなる(催眠剤を使う場合)
※上記は例なので、当日の注意点は、受診する眼科に確認しましょう※
小さな赤ちゃんに、日帰りとはいえ手術(ブジー処置)をするのは、心配な親御さんも多いと思います
疑問点は担当医によく聞いて、内容を理解することで、少しでも不安がなくなるように願っています
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金芳堂 (監修)下村嘉一 (編集)國吉一樹
2020/11/12