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角膜感染症

角膜感染症(かくまくかんせんしょう)

 

角膜感染症について説明します

「角膜」は「ものを見る」うえで大事な部分のひとつです

角膜がダメージを受けると、視力低下の原因になることもあります

また、一度傷ついた角膜は治療が難しい(角膜のにごりは治せない)こともあります

角膜感染症は、治療開始のスピードが大事です

角膜(黒目)の異変に気が付いたら、早めの眼科受診を心がけてください

 

【角膜感染症とは?】

角膜(黒目)(※1)に微生物が感染しておこります

人の目の表面は無菌ではなく、さまざまな細菌や真菌がバランスを保って生息しています

=常在菌

何らかの原因でそのバランスが崩れると、特定の微生物が目の表面で増えてしまいます

⇒これが【角膜感染症】です

 

(※1)【角膜とは?】

角膜とは、黒目の皮で、光が目に入るのに最初に通過する膜

透明な膜で、血管がない組織(=血管がないので、角膜移植の成功率が高い)

直径は成人でだいたい10~11㎜

厚さは正常な人の平均は、中央で0.8mm、周辺で1mm

眼球のうちで最大の屈折力を持つ(屈折力約43D)

5層からなる(角膜上皮、ボーマン層、角膜実質、デスメ層、角膜内皮

角膜の一番内側の角膜内皮には角膜内皮細胞が並んでいる

角膜内皮細胞は一旦ダメージを受けると回復できない

角膜内皮がダメージを受ける=角膜がくもる

栄養は角膜周囲の血管網、房水、涙からうけている

痛覚と冷覚がある

 

【角膜感染症の原因】

≪原因となる微生物≫

細菌

真菌(カビ)

ウィルス

原虫(アメーバなど)

など

 

≪常在菌のバランスが崩れることによる発症≫

抗菌点眼薬の長期使用

極端なドライアイ

汚染された液体の飛入

汚染物による受傷

例1)植物(稲や木の枝)などで目を突く

例2)土や小石の飛入

例3)適切な管理がされていないコンタクトレンズ

 

≪体内に潜んでいたウィルス感染による発症≫

ステロイド薬の使用などによる免疫抑制状態

目のケガ

※ウィルスによる感染の多くは、体内に潜んでいたものが原因

幼少期にウィルス感染があり、その後ずっと目の奥の神経に潜んでいた(潜伏感染していた)ウィルスが、何かのきっかけで突然角膜にでてきて発症する(再帰感染さいきかんせん

ウィルス感染の代表的なもの)角膜ヘルペス

 

 

【症状】

角膜は本来、お椀のように球面透明だが

炎症があると変形したり混濁したり(=にごる)する

充血

目やに(眼脂)

異物感

眼痛

視力低下

角膜穿孔(かくまくせんこう)

…炎症が強い場合や治療に抵抗して進行した場合に、角膜が融けて孔(あな)があくことがある

 

など

 

【治療】

重要:治療は担当医の指示どおりに厳重に行う必要があります

重症の場合には、点眼薬を1時間ごとに点眼することもあります

(つまり起きている間、1日に10回以上の点眼することになる)

※「点眼したら目がしみる」などの理由で勝手に回数を減らしてはいけません

点眼をおろそかにすると、炎症が長引いて治りが悪くなり、結果的に角膜が白く濁って重い視力障害が残ってしまうこともあります

※目の状態や治療方法などによっては当院から別医療機関への紹介となることがあります※

角膜感染症では、適切な治療を開始しても、数日ですぐに見え方が良くなることは少なく、視力が改善するには速くても1週間、遅い場合は、数か月以上かかることもあります

治療を開始して、すぐに見えなくても、治療を諦めてはいけません

 

重要:突然、あたたかい涙が多量に出てきたら、角膜が溶けて孔(あな)があいてしまった可能性があるので、すぐに担当医に報告してください

場合によっては緊急手術が必要です

※この手術は当院では実施しておらず別医療機関への紹介となります※

 

【治療の進め方】

「感染症の治療の原則=原因となる微生物を特定し、その微生物に効果のある薬剤を投与すること」です

原因微生物を特定するために、メスなどで角膜の感染部分をこすり取って顕微鏡で調べたり、培養検査を行うことがあります

培養検査で微生物が検出されれば、どの薬剤が効くのかを調べます(=薬剤感受性検査)

これらの検査には、通常、数日から1週間以上必要です

 

しかし、角膜を含む感染症は、一刻も速く治療を始めなければ手遅れになる可能性があります

 

そのため、通常は、培養検査や薬剤感受性検査などの結果を待たずに治療を開始します

(=初期治療)

 

初期治療では原因微生物を推測して、それに効果のある薬剤を投与します

 

原因微生物の推測には…

前述の顕微鏡で調べた結果

それまでの生活歴

病歴(受傷歴)

治療歴

角膜のにごり(角膜混濁かくまくこんだく)の性状

結膜や眼内の炎症の状態

などの情報が大きなヒントとなります

 

初期治療で推測される微生物は1種類とは限らないため、可能性のある全ての微生物を標的にするために、複数の薬剤を組み合わせて同時に使用することがあります

 

そして、培養検査の結果が判明した段階で、初期治療を見直しします

 

見直しにより治療方針が変わらないこともありますが、結果によっては、治療方針を大幅に変えることもあります

※目の状態や治療方法などによっては当院から別医療機関への紹介となることがあります※

 

【治療方法とその合併症】

点眼薬の点眼

眼軟膏の点入

内服

点滴

など

※目の状態や治療方法などによっては当院から別医療機関への紹介となることがあります※

 

たくさんの薬剤を使用するので以下の点に注意してください

薬剤アレルギーの経験がある場合は、担当医や看護師に必ず申し出る

抗菌薬を内服や点滴で全身投与すると、胃腸の調子が悪くなることがあるので、下痢が出始めたらすぐに担当医や看護師に報告する

その他、何か気が付いたことがあればすぐに報告する

 

 

【角膜感染の予後】

①軽症ですみやかに治療を開始した場合

もとの視力に戻ることがある

②重症の場合・治療の開始が遅れた場合・治療に抵抗性がある場合など

視力が戻らないことがある

③薬剤だけで炎症が治らない場合・角膜に孔があいた場合

角膜移植などの手術が必要になることもある

※この手術は当院では実施しておらず別医療機関へ紹介となります※

 

 

角膜のにごり・異変などに気が付いたら、早めの眼科受診を心がけてください

角膜感染症の原因で、自分では予防できないものもありますが、コンタクトレンズの正しい管理は、自分でできることです

コンタクトレンズの誤った使い方はしないようにしましょう

 

※症状や治療方法については個人差があります※

※詳しくは担当医にお尋ねください※

 

 

参考文献

「眼科インフォームド・コンセント ダウンロードして渡せる説明シート」2018

監修 下村嘉一 編著 國吉一樹

 

「眼科コメディカルのための眼科学ガイド」2005

編集・発行 社団法人 日本眼科医会 眼科医療従事者委員会

 

 

2021/02/15

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