先天色覚異常
先天色覚異常(せんてんしきかくいじょう)
【先天色覚異常とは?】
生まれつき持っている色覚異常です
ほとんどが、赤色と緑色の判別が難しい【赤緑(せきりょく)色覚異常】です
頻度は、男性では5%(20人に1人)、女性では0.2%(500人に1人)です
一方で、先天青黄(せいおう)色覚異常や全色盲は、数万人に1人の頻度で、非常に珍しいようです
【先天赤緑色覚異常】
≪赤緑色覚異常は、赤と緑の判別が難しい色覚異常です≫
「赤」だけが見えない、「緑」だけが見えないのではなく、赤と緑と両方の感覚が弱く、赤と緑の区別が苦手です
赤や緑が違う色(例えば、茶色っぽく見える)に見えてしまう場合もあります
赤と緑が似たような色に見えて、区別、判別がつきにくいです
たとえば、緑の黒板に書かれた、赤いチョークの字が読みづらい、ということもあるようです
なぜかというと、
赤と緑の感覚は赤錐体(※1)と緑錐体の両方が働いて作り出されるため、どちらか一方が弱いか働いていない状態では、赤と緑の感覚は、弱いか生じなくなるからです
区別しにくい色は、
赤と緑
オレンジ(赤み+黄み)と黄緑(緑み+黄み)
などです
色の中の赤み成分、緑み成分を感じにくいということです
区別しにくい色は他にもありますが、これも個人差が大きいです
(※1)錐体
目の奥にある【視細胞】(しさいぼう)は、
明るいところで働く【推体】(すいたい)
暗いところで働く【杆体】(かんたい)
に大きく分かれます
【推体】には
長い波長の色に感度が高い【赤推体】(L推体)
中程度の波長の色に感度が高い【緑推体】(M推体)
短い波長の色に感度が高い【青推体】(S推体)
があります
それぞれの錐体の反応をミックスしたりバランスをとったりして色の感覚(色覚)が生じます
色覚異常とは、色の感覚をもつ3種類の錐体のうち、いずれかの働きが弱い状態です
≪色覚異常は個人差が大きいです≫
正常色覚と区別が難しいくらいの軽度の人
日常生活では不便はでないが、疲れているとき、暗いところ、小さなものだと間違ってしまう人
赤と緑の違いが全くわからないという程度が強い人
などさまざまです
通常の先天赤緑色覚異常の視力は正常で、視力のハンディキャップはないです
≪先天色覚異常は遺伝します≫
赤と緑を感じる色覚の遺伝子はⅩ染色体(性染色体の1つ、XXで女性、XYで男性)上にあります
赤緑色覚異常の遺伝子を持つX染色体を遺伝で受け継いだ場合
XY
(男性:色覚異常を発症 X染色体は1本しかないので必ず発症)
XX
(女性:保因者(キャリア):片方のX染色体には色覚異常がないので発症しない)
XX
(女性:色覚異常を発症 両方のX染色体に色覚異常の原因がある 頻度はまれ)
≪先天色覚異常は治療することができず、訓練してよくなるものでもありません≫
しかし、症状が進行することもありません
また、通常の先天赤緑色覚異常が原因で視力が低下することはないようです
≪日常生活における注意点≫
先天色覚異常の人が、日常生活で実際に困ることはほとんどないようです
区別しにくい色があっても、知らず知らずのうちに自分なりの工夫、たとえば形など、色以外の手がかりを見つけて判断する習慣が身についているからです
自分の色覚異常に気が付かずに過ごしている人もいます
もし、色覚異常と診断されたら、「色に関しては自分は間違っているかもしれない」と認識することができます
色覚異常があることを自覚していないと、色について間違っているということ自体にも気が付かないのです
色覚異常があると分かったら、いつも色だけで判断しないように気を付ける必要があります
≪もし、お子さんが色覚異常と診断されたら…≫
たとえば、強度の色覚異常の人が、りんごを見て、「赤」と答えた場合にも、色がわかっているわけではなく、リンゴ=赤と学習した結果で、そう答えているのです
そうすると、青りんごを見ても「赤」と答えてしまいます
⇒色以外の手がかりである形などから色を判断している
初めてみるもので、色を判断するときは気を付ける必要があります
訓練すれば色がわかるようになるというわけではないので、色だけで判断しなければならない場面に出会ったら、他の人の助けを借りるのもいいことでしょう
そのためにも周囲の人の理解を得ることも大切です
たとえば、持ち物で色を間違えたくない場合は、どこかに、色を記入しておくのも良い方法のようです
たとえば、ピンクと白のシャツの色の区別がつきにくいので、タグに色を書いておくなどです
親御さんの接し方として、幼少期はさりげなく色の名前を教えてあげるとよいです
この学習により、成長後も他人と色のことで話が食い違うことが少なくなります
≪先天赤緑色覚異常と職業選択≫
日常生活なら許される色間違いでも、仕事では、そういうわけにはいかないこともあります
色の判断が仕事で重要な位置にある職業には就くことが難しいようです
たとえば、鉄道運転士、パイロットなどは、人命を預かる仕事なので、厳しく制限されています
他に、染色業や印刷業なども、色の判断が問われる仕事は難しいかもしれません
将来の職業選択に際し、自分の特性としての色覚異常を知っていたか、知らなかったかは、
全然違うと思います
色覚異常がある場合、自分の特性として、本人が知っておくこと、周りの正しい理解があることが大切だと思います
※色覚異常に関して、当院で実施できる検査とできない検査があります※
※必要があれば別医療機関への紹介となります※
参考文献
【眼科インフォームド・コンセント ダウンロードして渡せる説明シート】2018
金芳堂 (監修)下村嘉一 (編集)國吉一樹
2020/10/08