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低濃度アトロピン治療:目薬で近視進行を抑制する~について

はじめに

近視は遺伝性疾患と言えます。両親のいずれかが近視ですと、お子さんに高率に遺伝します。さらに、昨今の児童をとりまく環境要因(外遊びの減少、スマホの普及など)が加わり、近視進行が促進されます。近視が過度に進行すると、日常生活で常に眼鏡装用が必要となる不便さのみならず、将来的に網膜剥離や強度近視性黄斑変性など、目の機能そのものを大きく損ねる可能性が増えてしまいます。

そこで当院では、近視の進行を止めるために新しい治療法を始めました。
アトロピンという目薬を約100倍に薄めてさすという方法です。海外の論文では、副作用を最小限にして、なおかつ十分な近視進行抑制効果が得られることが示されています。
現在国内では承認薬はありませんので、完全な自費診療扱いとなります。さらに通常は海外メーカーの製品を輸入して使用しますが、これですとかなり高額になります。(毎月3~4000円程度)

現在我が国でも7施設で共同研究がなされており、今後国内でもこの治療薬が正式に承認されるようになるかもしれませんが、いつになるかわかりませんし、その間も近視のお子さんの症状はどんどん進行するので,当院では自家調剤という方法を採用しました。当院の手術室(クリーンルーム)にて、内眼手術と同様の清潔環境下で薬剤を調合いたします。これにより、 既存の薬剤を使うより比較的リーズナブルに自費治療を提供できる上、近視進行の早いお子さんには適宜アトロピン濃度を濃く調合して治療強化できるという利点があります。

低濃度アトロピン治療とは

低濃度アトロピン治療の対象者

低濃度アトロピン投与の対象者は「近視が進行しそうな子供」です。学校検診で近視で引っかかり、親御さんが近視(遺伝要因)、近見作業が多い(環境要因)などです。近視は小学校低学年から高校くらいまで進行するリスクがありますから、何年も続けることになります。

低濃度アトロピン治療の特徴

  • 副作用がほぼ皆無の近視抑制薬です。
  • 近視の進行を平均40%軽減させると言われています。(初期論文では60%でしたが、、(;'∀'))
  • 日中の光のまぶしさにほとんど影響を及ぼさないため、サングラスもほぼ不要です。
  • 目の遠近調節機能(手元を見る作業)に殆ど影響を与えません。
  • 近見視力の低下に殆ど影響を与えず、更に累進屈折眼鏡も不要です。
  • 毎日就寝前に1滴点眼するだけの、非常に簡単な治療法です。
  • 目薬(1本5㎖)は両眼用で1カ月の使い切りです。

低濃度アトロピン治療の安全性

シンガポール国立眼科センター(SNEC)のアトロピン0.01%の効能・効果及び安全性の研究(点眼を2年間継続した後によるもの)では以下のように報告されています。

  1. アレルギー性結膜炎及び皮膚炎の報告はありませんでした。
  2. 眼圧に影響を与えないとの報告でした。
  3. 白内障を発症するとの報告はありませんでした。
  4. 点眼終了後も目の遠近調節機能の低下、また瞳孔がひらき続けてしまうという報告はありませんでした。
  5. 電気生理学上、網膜機能に影響を与えるという報告はありませんでした。

治療について

治療の詳細

対象は基本的に6歳~17歳まで、軽度~中等度(-1D~-6D)までの児童ですが、個々の症例に応じて適応を判断します。
最低でも2年間以上、可能なら思春期終了まで(17~18歳)の継続が推奨されます。
就寝前に必ず1滴点眼してください。(2滴不可)
目薬は防腐剤非添加です。感染症などのリスクを避けるため、1か月後に残量があっても必ず破棄してください。
3ヶ月ごとに1回診察・検査が必要です。そして、半年で0.5D(ジオプター:近視の度合いを表す単位)以上進行例には濃度を上げていくこともあります(後述)

治療の限界

当治療はあくまでも近視の進行を抑制するものであり、「いまそこにある」近視を軽減することはありません。つまり、今視力0.5のお子さんが、この治療によって視力1.0に回復する、ということはありません。また、抑制効果は2年間でおよそ6割であり、近視の進行を完全に抑え込むこともできません。つまり、当治療を継続しても、ある程度は近視進行するということになります。

その後の研究で、0.01%では濃度が薄すぎる可能性が高いこともわかってきました。もともとのシンガポールでのスタディでも、近視進行抑制効果は明らかに濃度依存性(濃いほどよく効く)があったのですが、副作用との兼ね合いで0.01%に決められたところもあります。そこで、0.01%で治療を開始して、半年で0.5ジオプトリー以上の近視進行があれば、濃度を0.02%に高めて治療を継続する、その後も同様の指標で徐々に0.03%、0.04%と高めていくべき、との報告もあります。

このように、濃度を変えて治療を継続する際も、当院のように自家調合していると便利です。既製品だと濃度が0.01%しかないからです。

治療効果を高めるために

最近の研究で、外遊びを2時間以上する子供はやらない子供よりも有意に近視の進行が抑制された、との報告があります。つまり、家でスマホやTVゲームばかりやらないで、外でスポーツなり鬼ごっこなり(←今の子供がやるのか?)をしたほうが良い、ということです。ただし、現実問題として2時間の外遊びを継続するのは難しいでしょうから、せめて40分程度の外遊びでもよいそうです。

また、当院で採用してる、低濃度アトロピン治療とオルソケラトロジー治療(寝たままコンタクトで近視を矯正する方法)との併用療法が、近視進行抑制に相加効果があるとの報告がなされています。(自治医科大学さいたま医療センター眼科)

費用について

本治療は自費診療(保険適応外)です。

初回の処方時 5,400円(税込み) 診察・検査費用+目薬代 1本分。
屈折(近視の程度)、眼軸長、視力、眼疾患の有無などをチェックいたします
3か月ごとの定期受診 6,500円(税込み) 診察・検査費用+目薬代 3本分。
屈折(近視の程度)、眼軸長、視力、瞳孔径、副作用の有無などをチェックいたします
注意
  • 点眼に伴う合併症の治療すべて実費負担です。
  • 近視進行抑制以外での診察はかならず別の日に受診していただきます。たとえば定期検査の日に、花粉症も診察、ということは行いません。
  • 患者さんの都合で治療が中断になる場合、いかなる理由であっても返金はいたしません。医師の判断で中止する場合は個別に対応いたします。
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