涙管チューブ挿入術
涙管チューブ挿入術(るいかんチューブそうにゅうじゅつ)
涙道閉塞の治療方法である、涙管チューブ挿入術についてまとめます
※この手術は当院では実施しておらず、別医療機関への紹介となります※
「涙道閉鎖」とは、涙道が詰まっている状態です
涙道とは、涙点を入口として、涙点⇒上下の涙小管⇒涙のう⇒鼻涙管⇒鼻の奥(下鼻道)へと流れる、涙の通り道です
涙の一部は、鼻に抜けていきます(また一部は、黒目(角膜)、白目(結膜)を潤した後に蒸発しています)
大泣きすると、涙だけでなく鼻水が大量に出てくるのは、涙道を伝ってきた涙が鼻に流れ込み、鼻水と一緒にでてくるからです
涙道が詰まっていると、涙が鼻に流れていかないため、なみだ目(流涙)になります
また、詰まる場所によっては目ヤニがでます
【涙管チューブ挿入術を受けるタイミング】
なみだ目が気になりはじめたものの、まだ目やにが出ていない時期が一番よいようです
目やにが出るようになると涙道は完全に閉塞していて、 【涙のう炎】(るいのうえん)という状態になり、涙管チューブ挿入術をしても、治療成績は良くないようです
(涙のう炎になった場合は、涙のう鼻腔吻合術(るいのうびくうふんごうじゅつ)の方が良い場合がある)
※この治療は当院では実施しておらず、別医療機関への紹介となります※
【手術成績】
チューブが入った場合には40~90%の確率で治るようです
その確率は閉塞の場所や長さにより異なります
手術が成功しても、しばらくすると、再閉塞することもあります
再閉塞した場合は、チューブを入れ直すか、他の手術を行うかを担当医と相談していきます
閉塞部位が癒着して硬かったり、涙道の屈曲・蛇行が強い場合にはチューブが入らないことがあります
チューブが入らなければ、治りません
涙管チューブ挿入術を受け、成功すると、なみだ目や目やにの症状が改善し、急性涙のう炎を予防することができます
また、チューブは入れれば治るというものではなく、手術の後は、チューブの再調整や点眼薬の変更・追加などがしばしば必要になります
手術後は、点眼薬をきちんと使い、決められた定期的な診察を必ず受けてください
【チューブの抜去】
手術で、涙道に入れたチューブは、2~3か月で抜去(ばっきょ)します(取り出します)
チューブの留置期間は個人差があります
チューブ留置期間中は目ヤニと間違ってチューブを引き抜かないように注意が必要です
【鼻の病気や抗がん剤について】
鼻・副鼻腔疾患がある場合には、耳鼻科での治療が必要です
鼻・副鼻腔疾患がある場合には、涙管チューブが入らない場合があります
また、チューブが留置できても、再閉塞のリスク高くなるので、耳鼻科での治療継続が必要です
抗がん剤の副作用で涙道閉塞が起こる場合があります
抗がん剤による涙道閉塞は治ることがなく、進行すると涙道治療は不可能になることがあります
抗がん剤使用中に涙がでやすくなった場合には、担当医に相談してください
早めにチューブを留置して涙道の癒着や閉塞を防がなければいけないためです
【涙管チューブ挿入術の手術方法】
※この治療は当院では実施しておらず、別医療機関への紹介となります※
①涙道内視鏡を使う方法
内視鏡を使うとより正確にできる
手術時間が長くなる
(麻酔)点眼麻酔と注射の麻酔
↓
涙道内視鏡を入れ、閉塞部位を直接拡げる
↓
拡げたところにチューブを入れる
↓
チューブがきちんと入ったか、内視鏡で確認
②涙道内視鏡を使わず直接チューブを挿入する方法
表面の麻酔だけで手術可能なので外来で処置できる
(麻酔)点眼麻酔と涙道内に麻酔液をしみこませる麻酔
↓
そのままチューブを入れる
【手術の合併症】
総じて安全な手術ですが、以下のような合併症がでることがあります
・チューブは人工物のため、その周りに細菌が付着して感染が起きることがある
・チューブに対して、異物反応が起こり、チューブの周りの肉が盛り上がり、再狭窄、再閉塞を起こす
・術後の疼痛
・鼻出血、血の涙
・皮下出血
・眼瞼腫脹
・感染
・再閉塞
・アレルギー、ショック
・その他、致命的なイベント(脳出血、心停止など)…頻度不明、眼科手術とは関係ないことが多い
担当医から、もし、涙管チューブ挿入術の話が出ましたら、手術を受けるメリット、どんな手術なのかを理解した上で、相談できるとよいと思います
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金芳堂 (監修)下村嘉一 (編集)國吉一樹
2020/11/16