涙嚢鼻腔吻合術
涙嚢鼻腔吻合術(るいのうびくうふんごうじゅつ)
涙のう炎の治療法の1つ、【涙のう鼻腔吻合術】についてまとめます
※この手術は当院では実施しておらず、別医療機関への紹介となります※
「涙のう炎」は、涙のう(=涙の通り道にある「なみだ袋」)に炎症を起こしている状態です
炎症を起こす原因として、涙道閉鎖(多くは鼻涙管閉塞)があり、涙が流れずに詰まることで、細菌感染を起こすためです
※※涙道のどこの箇所が詰まるか、また、詰まりの程度は、個人差があります※※
涙のう鼻腔吻合術では、涙のうと鼻腔に、孔(あな)を開けて、涙の通り道を作ります
(涙道が詰まっていることで、涙のう炎が起きているので、手術で涙の通り道を作り、涙のう炎の原因をなくす)
【涙のう鼻腔吻合術】には
内視鏡を使って行う【鼻内法】
皮膚切開を必要とする【鼻外法】
があります
①内視鏡を使って行う【鼻内法】
鼻の中からアプローチするため顔に創(きず)ができないことがメリット
鼻の中から涙のうと鼻の間の骨を削る
適応範囲が狭い(基本的に鼻涙管閉塞のみ)
手術中の痛みが強いため全身麻酔で行うことが多い
涙の通り道(骨の切開孔)…小さくなりがち
術後疎通率(成功率)…ほぼ100%
再閉塞…10%程度
②皮膚切開を必要とする【鼻外法】
皮膚切開をするので、顔に創(きず)ができる(半年程度で目立たなくなることがほとんど)
皮膚を切開し、涙のうの内側の骨を削る
適応範囲が広い
局所麻酔で手術が可能
涙の通り道(骨の切開孔)…大きく作りやすい
術後疎通率(成功率)…ほぼ100%
再閉塞…1%未満
※これらぼ手術は当院では実施しておらず、別医療機関への紹介となります※
【鼻に炎症のある人は手術前に治療を】
鼻・副鼻腔炎などが合併している場合は、必ず耳鼻科で鼻も治療してください
鼻の炎症が残っているまま手術を受けると、術後の成績が悪くなります
【血をサラサラにする薬(抗血小板剤や抗凝固剤)を飲んでいる人は確認を】
涙のう鼻腔吻合術は骨を削るので出血が多い手術です
休薬をする場合、内科の担当医に確認をとる必要がありますので、眼科の担当医に必ず申し出てください
【術後の注意点】
涙のう鼻腔吻合術の後は、鼻血が出やすいので、1か月くらいは咳や鼻かみはしないようにしてください
また、くしゃみもできる限り抑えてください
【涙のう鼻腔吻合術の限界】
手術が成功しても数年後に再閉塞することがあります
ですが、涙管チューブ挿入術に比べて再閉塞率はずいぶん低いです
涙小管の部分が広範に閉塞している場合には、涙のう鼻腔吻合術では治らないので、他の術式が必要になります
【手術の合併症】
涙のう鼻腔吻合術で起こりうる合併症
頻度100%…術後の疼痛/鼻出血/血の涙/眼瞼膨張/皮下出血(頻度不定)
頻度1~10%…再閉塞
頻度10%以下…創部感染
頻度不明1%以下…アレルギー・ショック/髄液漏
頻度不明…その他致命的なイベント(脳出血・心停止)眼科手術とは関係がないことが多い
頻度は程度による…手術創の瘢痕(はんこん)
涙のう炎が急性なのか慢性なのか、急性だとしたら、症状が落ち着いているのか、などで、
どの手術(術式)になるか、また、手術を受けるタイミングなどが変わってきます
担当医とよく相談して決めていただくといいですね
※当院でも涙のう炎の診察は行いますが、手術適応となった場合は別医療機関への紹介となります※
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金芳堂 (監修)下村嘉一 (編集)國吉一樹
2020/11/27