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角膜ヘルペスと言われたら【後編】

[2021.04.28]

角膜ヘルペス

 

皆様こんにちは

もし〖角膜ヘルペス〗と言われたら、参考にしてください

前編・後編でお伝えします

前回の前編では、

ヘルペスとは何か?

角膜ヘルペスとは何か?

をお伝えしました

潜伏感染再帰感染についてもお話していますので、まだ読んでいない方はそちらからお願いします

 

角膜ヘルペスは大きく分けて2つのタイプ(病型)があります

タイプごとに症状や治療法が異なる場合があります

2つのタイプが混在することもあります

 

角膜ヘルペスのタイプ(病型)≫

①上皮型角膜ヘルペス(じょうひがたかくまくヘルペス)

②実質型角膜ヘルペス(じっしつがたかくまくヘルペス)

です

両者は混在することもあります

③上皮型と実質型の併発

 

(参考)角膜とは??

角膜とは、黒目の皮で、光が目に入るのに最初に通過する膜

光が通過するためには、角膜は透明である必要がある

透明な膜で血管がない組織

5層からなる角膜上皮、ボーマン層、角膜実質、デスメ層、角膜内皮)

角膜の一番内側の角膜内皮には角膜内皮細胞が並んでいる

角膜内皮細胞は一旦ダメージを受けると回復できない

角膜内皮がダメージを受ける=角膜がくもる

栄養は角膜周囲の血管網、房水、涙からうけている

痛覚と冷覚がある

 

 

【①上皮型角膜ヘルペス】

角膜の表面にある「角膜上皮」に病変がでます

角膜上皮に枝分かれのある病変(樹枝状潰瘍)や、それが拡大した地図上潰瘍がでます

単純ヘルペスウィルスが角膜の上皮細胞(角膜表面の細胞)に再帰感染して起こります

上皮型角膜ヘルペスにかかると、角膜表面にキズ(潰瘍かいよう)ができます

≪症状≫

充血

眼痛

視力低下

異物感(コロコロ)

炎症が強い場合:角膜が融けて孔(あな)があく【=角膜穿孔(かくまくせんこう)

 

≪治療と副作用≫

単純ヘルペスウィルスの感染により起こるので、抗ウィルス薬の眼軟膏が治療の中心

(ステロイド薬はかえって病態を悪くするため使用しない)

※治療の注意点

抗ウィルス薬の眼軟膏は、長期間使用すると角膜上皮を痛めてしまう可能性があるため、担当医から指示された回数・期間を守ってください

 

(一般的な上皮型角膜ヘルペスの眼軟膏治療例)

最初の1週間目:1日4~5回

2週目:1日2~3回

(合計2週間で治ることがあるが、それを超えて3週目以降も抗ウィルス眼軟膏を使用することもある)

3~4週目:1日1~2回(3週目以降も抗ウィルス眼軟膏を継続する場合)

※もし1日4回以上を1か月以上使っている場合は担当医に相談してください※

※症状や治療方法については個人差がありますので、詳細は担当医にお尋ねください※

 

抗ウィルス薬の内服では、腎臓の働きが悪くなったり皮膚に発疹が出ることがまれにあります

内服時には水分を多めにとるように心がけてください

もともと腎臓が悪い人は、必ず担当医に申し出てください

 

【②実質型角膜ヘルペス】

実質型角膜ヘルペスは上皮型角膜ヘルペスとは異なり、単純ヘルペスウィルスに対する免疫反応で起こります

≪症状≫

実質型角膜ヘルペスでは、角膜が腫れて変形し、混濁します

目の中にも炎症が出ることことが多く、それにより眼圧があがることがあります(=【続発緑内障(ぞくはつりょくないしょう)】)

実質型角膜ヘルペスは再発することがあり、再発を繰り返すと、角膜に血管が進入して血液成分が析出して強い混濁を残すことがあります【=壊死性角膜炎(えしせいかくまくえん)】この場合は、大幅に視力が低下し、回復しないようです

 

≪治療≫

実質型角膜ヘルペスは、単純ヘルペスウィルスに対する免疫反応がその原因のため、ステロイド薬による治療が主体となります

抗ウィルス薬の軟膏や内服は補助的に使われます

実質型角膜ヘルペスの治療は、再発の繰り返しや上皮型の併発などにより複雑となり長期にわたることもあるようです

実質型角膜ヘルペスは治った後も、ステロイド薬を長期間使用することがあるようです

その場合は、上皮型角膜ヘルペスの出現に注意が必要です

もし、上皮型病変が出ているのにステロイド薬を継続して使用すると、上皮病変が悪化して複雑な病態となり、ひどい時は角膜穿孔(かくまくせんこう)(=角膜に孔があく)を起こしてしまう場合があります

実質型が治った後にステロイド薬をどのように使うかは、専門家の間でも意見が分かれるところで明確な答えはないようです

※ステロイド薬の使用が長期間に及ぶ場合は、その必要性について担当医の意見を聞いてください※

 

【③上皮型と実質型の併発】

上皮型実質型同時に起こることがあります

その場合は、上皮型の治療(=抗ウィルス薬の眼軟膏や内服)を先に行い、それが改善してから、実質型の治療(=ステロイドを用いた治療)に移ります

治療により上皮病変が治ってきても実質病変は残っているために、視力は悪いままのことがありますが、時期をみて実質型の治療を開始すれば、ほとんどの場合で視力は徐々に回復していくようです

上皮型と実質型が併発した場合では、治療により上皮型が治っても抗ウィルス薬の眼軟膏を継続して使う場合もあります(上皮型の再発を防ぐために眼軟膏を1日1回で数か月~数年間使用するなど/1日4回で1か月以上続けることはまれ)

眼軟膏の頻回使用が長期間に及ぶ場合は担当医に相談してください

※抗ウィルス薬の内服では、腎臓の働きが悪くなったり皮膚に発疹が出ることがまれにあります

 内服時には水分を多めにとるように心がけてください

 もともと腎臓が悪い人は、必ず担当医に申し出てください

 

【角膜ヘルペス/ヘルペス角膜炎の予後】

ヘルペス角膜炎が軽症で、すみやかに治療を開始した場合は、たいてい元の視力に戻るようです

重症の場合、治療開始が遅れた場合や治療に対する反応が悪い場合には、視力が戻らないことがあります

強い炎症により角膜に孔(あな)があいた場合や角膜に混濁が残った場合には、角膜移植などの手術が必要になることがあります(※この手術は当院では実施しておらず別医療機関への紹介となります)

 

角膜ヘルペスは、上皮型実質型のいずれの病型も、治ってから数か月後~数年後に再発することが多いようです

上皮型が再発しても上皮型になるとは限らず、実質型になることもあります

また、実質型が再発しても実質型になるとは限らず、上皮型になることがあります

そのため、その時々で、病型に合わせた治療が必要です

 

角膜ヘルペス(ヘルペス角膜炎)の治療は、長期にわたることがあり、また、再発を繰り返すこともあります

「同じくウィルス感染である風邪」のように治ったらおしまいというわけではなく、担当医との信頼関係のもとに、一生付き合っていかなければならない病気です

 

角膜ヘルペスにもタイプがあり、上皮型、実質型、併発した場合で治療方法や治療薬が変わります

再発した場合、前と治療方法が違う、、、、と戸惑うことがあるかも知れません

タイプによって治療方法が異なる場合があることを知っておくといいですね

病状や治療方法については個人差がありますので、詳しくは担当医にお尋ねください

(※当院でも治療を行いますが、症状や治療方法などによっては別医療機関へ紹介となる場合があります※)

再発の場合で、前と違う眼科にかかる場合は、前回どのような治療をどのぐらいの期間したのかを伝えられるとよいと思います

治療が長期にわたることもありますので、担当医との信頼関係を築くのも大切ですね

どの薬でもそうですが、医師との相談や確認、診察なしに自己判断で回数を変えたり、中止したり、再開したりはしないようにしてくださいね

 

角膜ヘルペスと言われたら(前編)

 

金沢文庫アイクリニック 稲澤

 

参考文献

「眼科インフォームド・コンセント ダウンロードして渡せる説明シート」2018

監修 下村嘉一 編著 國吉一樹

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